離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「他にもあるっていえばあるんですけど、すぐには思い出せないなぁ」

 いつも脳内でリスト化しているわけじゃないから。

「思い出したら、また教えて。っていうか俺は和歌についてなにも知らないんだな、そんなこと考えていたなんて」

 確かにわたしが希望を伝えた回数は少ない。それはいつも慶次さんが最適解を与えてくれていたから、わたしは受け取ることしかしてこなかった。だから慶次さんが悪いわけじゃない。

「わたしも言わなかったですし。でもこうやってたったひとつでも叶って、とてもうれしいです」

 笑みを浮かべた瞬間、店内からわたしたちの順番を知らせる声が響いた。


 それから四日後の夜。

 わたしは慶次さんに連れられてマンションのひと部屋を見学していた。新築の物件で1DK、希望の駅からの距離とバス・トイレ別、できればキッチンが広いという条件と、慶次さんが言うセキュリティ面でも合格の物件だ。もちろん気に入らないわけはない。

 これまで見た中で一番豪華。ということは、家賃も高いはずだ。
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