夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました

初対面の相手に、なんなの?
腹立つな…

黙っていれば亜梨沙のタイプなのに、口が悪いし、性格が悪そうな感じが、残念でならない。

「歩いて行きます」

島のマップは船内で確認済みだし、こんな感じの悪い人に頼らなくても歩いてやる。

「ふーん」

スタスタと早足であるく横を、軽のワンボックス車が通り過ぎて行く際、運転席の彼が意地悪くプップッーとクラクションを鳴らした。

あー腹立つ。

舗装してある道路とはいえ、10日分の荷物が入ったキャリーケースを引きながらの、なだらかな傾斜路を歩くのは結構きつかった。

目的地の『星砂の宿』と書かれた看板と先程の軽のワンボックス車を見つけた際、素直に乗せてもらえばよかったと少しだけ後悔したのは、悔しいから絶対言わないけど…少しだけ息切れしている呼吸を整えてペンションのドアを開けた。

「いらっしゃいませ」

笑顔で出迎えてくれたのは、親世代の女性だった。

「こんにちは、今日からしばらくお世話になる松浦です」

「松浦さん、待ってたわよ。主人は、ちょっと釣りに出てるのよ。夕食の際、ご挨拶させていただくとして、私のことは真那さんって呼んでね」

フレンドリーで親しみやすい女性に鍵をもらい、施設の説明をされる。
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