夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「松浦さんのお部屋は、ここを出て左に少し登って行ったコテージの2号室よ。シャワールームとトイレ付き、冷房完備だけど、洗濯機は、共有スペースにあるから、ルールを守って使ってね。シーツの換えは、言ってくれれば用意するわ。食堂は、この奥にある防波堤沿いからも入れるわよ」
「オーナー、車の鍵…」
フロントのドアをくぐり入ってきた男性は、158センチの私が見上げるほどの身長で、ヨレヨレの白Tシャツに膝にポッカリ穴があいたといってもいいほどのダメージジーンズ姿だった。よく見ると先程の男性で、私に気がつくなり意地悪い笑みを浮かべた。
「理玖くん、車使ってたのね」
「あぁ、ちょっと野暮用で借りた」
はいと言って、鍵を返す姿を隣で見ていた。
「そうそう、彼女、主人の友人の娘さんで、10日ほど静養を兼ねて滞在されるのよ。理玖くんの隣のコテージだから、よくしてあげてね」
「初めまして、千堂です」
「…松浦です」
素知らぬふりで笑顔で挨拶してくる姿は、憎らしいほど腹立たしく、愛想なく挨拶を返した。2人の間で、不穏な空気感が漂っているが、真那さんは感じないらしく話を続けた。
「理玖くんは、ここの常連さんだから、島のことには詳しいのよ。松浦さんさえよかったら、彼に島の案内を頼むといいわ」