夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「…はい。機会があればお願いします」
表面上は大人の対応とは裏腹に、絶対に頼むものかと舌を出している。
「じゃあ、理玖くん、松浦さんの荷物持ってあげて」
「俺も客なのに…」
呟く彼の苦情はスルーされ「よろしくね」と、見送られコテージに向かった。
結構重く、大きめのキャリーケースを軽々と片手で持った彼は、なだらかな坂を先に上がって行く。
私は、肩からかけていたショルダーバッグのみで、後を黙ってついて行った。
坂を上がっていくと、綺麗な青い海と真っ白な砂浜が前方に現れ、歓喜の声をあげた。
「うわー、天国みたい。来てよかった」
彼は足を止めて振り向き、フッと鼻で笑ったのだ。
「なんですか?」
「いや…」
「鼻で笑いましたよね⁈」
初対面での印象が悪い分、はしゃぐ姿を小馬鹿にされたようで面白くなかった。
「そんなつもりはなかった。ただ、俺もここへ始めてきた時、同じ事を思ったから、気分を害したなら謝るよ。港でも、悪かったな。女1人でこの島に来る客なんていないからさ、勝手に訳ありだと勘違いしてて、自殺でもされたら島の人が悲しむと思って、追い返そうとしたわけ。まさか、オーナーの知り合いとは思わなかった。ごめん」