夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました

やっと帰る気になったのねと安堵した、その時、私の体は後部座席に押し込まれ、荷物は放り投げられてしまっていた。

そして、動き出した車の中で隣に滑り込んでいた上坂のお爺さまが私の口に何かを含ませたハンカチを押し付けた。

薄れていく意識…

「このネックレスはGPS機能付きだろう」
と、窓から放るのを視界にとらえながら、
ブザーもスタンガンもGPS機能も役立たずだと…習い事に護身術を入れようと思うのだった。

目が覚めると、見知らぬ部屋。

うん、拉致られたのだと一人で納得。
影からの護衛なんて意味がない。この後、どうなるのかと不安でしかない私は、窓の外を覗き、芝生の地面に飛び降りても死なないだろうと勇気を振り絞って脱出を試みることにした。窓を開け、両手で手すりに捕まり足をかけた。

「…こらこら。俺の婚約者は何をするつもりだ」

今、会いたかった人の声に振り返ってみると
腕を広げて飛び込んでこいと待ち構えている。

「りーくー」

駆け寄り、抱きつく私を理玖の両手が包んでくれる。

「ばかー…会いたかったよ。……」

よしよしと後頭部を撫でる優しい手に気が緩んで涙が止まらない。

「頑張ったな」

「りぐー」

ぐちゃぐちゃの顔を理玖の服に押しつけていたら、頬を両手で挟まれて覗きこまれ笑われる。
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