夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「そうだな」
指を絡めて、甘く見つめ合う私と理玖。
「うおっほん。まずは、お父さんの手術に、理玖くんのお披露目だ。結婚は、まだダメだからね。だから、わかっていると思うが、その…」
「わかってます。籍を入れるまではですね」
「わかっていればいいんだ。いいんだ…」
しょんぼりと肩をおとす父の背を、怒りがおさまっていた母は、呆れ顔で撫でていた。
「亜梨沙の歳には、私は、妊娠してたんですけどね。自分のことを棚に上げて、婿に口うるさいと、亜梨沙に嫌われますよ」
「ゆりちゃん…バラすなんて酷いよ」
とっくにバレてますよ。と冷たくされたのは、見なかったことにしてあげよう。
両親が帰っていくと、私と理玖で祖父の病室へ移動。
寝ている祖父のシワだらけの手に痛々しい点滴の針。
「お爺ちゃん」
思わず、握るしわくちゃの手を弱い力で握り返された。
「…亜梨沙。無事でよかった。理玖くん、ありがとう」
「一応、病人に今は何も言いませんよ。元気になって文句を言わせてください。じゃないとひ孫見せませんからね」
「…亜梨沙、お前の婿は怖いの」
「…まだ婚約者だし、花嫁姿、見せたいんだから早く元気になってね」
「そうだな。ひ孫の前に亜梨沙の花嫁姿を見んといけん。そうと決まれば手術の日にちを決めんとならん」