夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「いや、あの場でムード求められてもムリだろう。手の項にでもキスすればよかったか?」
もうと、揶揄う理玖の胸を叩いた手を掴んで、項にチュッとキスする理玖に、父の反応は相変わらずで、何度言っても変わらない理玖の態度に遠い目をしながらの諦め口調になる父の姿に、母は、クスリと笑っていた。
「理玖くん、こういう場は、真摯な態度でね。頼むから、そういうのは、2人の時だけで」
耳元に顔を寄せてきた理玖は、『今日は、ここに泊まるから、部屋でムードたっぷりに求愛してやるよ』と囁いていく。
私も、誰にも邪魔されずに2人きりになりたかったので、頷いた。
「爺さん、適当に抜けていいよな」
「えっ、何言ってるの。理玖くんダメだよ」
「そうだよ。最後にお見送りしないと」
チッと舌打ちする理玖。
「そうよね。後継者としての面子もあるでしょう」
「はい、わかりました。俺はご挨拶終わるまで抜け出しません。でも、亜梨沙は、長々と着物を着てるのも苦しいだろうと思うので、解放してやってくれませんか?」
「えっ、私も後継として最後までご挨拶するよ」
『ちょっとは、空気読め』
小さな声で、理玖が私に苛立つ。