夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「少しは彼氏らしいことさせろ」
そう言い、自分の財布を開けて何かを見つけたらしい理玖は、驚いた様子の後、何事もなかったかのように支払いをしていた。
「お金出してくれてありがとう」
「大した金額じゃないから、気にするな」
「でも…」
「でもはなし。亜梨沙は俺の女なんだから、彼氏に甘えることも覚えような」
そう言われると何も言えなくなるが、期間限定の恋人で、明後日の午前中までの関係だ。
甘えるには、時間が足りない。
繋ぐ理玖の手をぎゅっと握り、このまま時間が止まればいいのにと願った。
宿に帰宅し、オーナー夫婦と一緒に夕飯になる。
なぜか、理玖との一夜の件に触れようとしてこない。素知らぬ様子で、今後の台風の進路について心配している。
島を抜けた台風は、大陸に向かう途中で温帯低気圧に変わるはずが、突然、勢いを増し、更に大きくなって方向を変えた。2日後には本土を真っ直ぐに上陸するらしい。
「亜梨沙ちゃん、帰るのは明後日だったね」
「はい」
「きっと、当日に帰るなら飛行機は飛ばないだろう。明日なら、まだ飛ぶはずだ。どうする?」
災害級の影響をもたらす台風に、変化してしまった。
選択肢は…一つしかない。