夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「気負うでない。まともに挨拶すればよいのは100人だけじゃ。残りは適当に流しておけ」
「その100人に婚約者候補は入ってないじゃん」
「プラス5人」
「えっ、5人も候補がいるの?」
「そうじゃ。次期久世の当主の器を持つ奴らじゃの。まぁ、そのうちの何人かはわしが選んでないから会ったこともないが…」
「えっ、会ったこともないのに候補者なの?」
「だから、今日、顔合わせするではないか。わしの一存でなら既に決まっとる。だが、それでは親戚どもが黙っとらんくっての…何人か勧めてきたわい。わしの死後、思うままに操れる男を当主の座に据え置きたいのが見え見えじゃ」
「だから、候補者なのね」
「そうじゃ。お前には久世の血筋を背負ってもらわねばならん。伴侶には、好いた奴を選ばせてやりたいが、そやつが浅愚ではならんのだ。慧眼と先見の明を持つ器、それに加えて上に立つ才を持つ男を見極めて、選ばねばならん」
「そんなのわからないよ」
「そうじゃな…だから、今日は第一次審査だと思えばよい。まずは、性質じゃな」
「性質って?」
「会ってみて、有りか無しかでよい」
「なにそれ?」
「性質的に会う会わんがあろう。第一印象でよい」