夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「そんな適当でいいの?」
「いいんじゃ。親戚どもの手前、顔合わせぐらいせんといかん。有りなら、そのまま候補者に入れておけばよい。最後にお前が選ぶ男は、決まっとる…ワハハ」
「決まってるって…それは誰ですか?」
「言ったらつまらん」
「お爺さま」
強い口調で呼んだ。
「ふむ…わしの一押しなんだが、なかなか靡かんでの
…まぁ、会ってみるがいい。他の奴らより、いい男じゃぞ」
あはははと笑い、扉を開けるようホテルマンに合図する祖父により、私の運命的な出会いが始まるのだった。
会場入りの合図で、賑わっていた場内が静かになる。
自然と、人々が動き中央に道ができた。
祖父を先頭に私が半歩後方を歩き、その後をお付きのように付き従う両親は、久世家長男といえ、跡継ぎでない以上は、控え目でなければならないからだ。
招待客の好奇的な視線の前で、内心は、穏やかではない。
緊張で、心臓が今までにない速さで暴れている。
あーやだ。
場慣れなんてできそうもない。