夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました

そんなことを表情には出さないで、淑やかに祖父の後に続いた。

そのまま、用意された壇上にあがり、祖父が中央に立ち、招待客の集まりに感謝の言葉を述べて始めた。

「久世 正でございます。本日は、忙しい中、久世の跡継ぎの為に足を運んで頂き、感謝いたします。…わしの孫娘、久世 亜梨沙をご紹介させて頂きます。まだまだ、跡継ぎとしては不勉強、至らぬところは皆様から助言を賜りますようお願いいたします」

表面上は、アドバイスをお願いしますと言っているが、久世家に口出しできる者など誰もいない。

「では、孫娘からご挨拶させていただきたく思います」

祖父の合図で、中央に立った。

壇上から見下ろす生意気な小娘と侮られてはいけない。緊張で震える手を前で重ね、お辞儀から始めた。

「只今、ご紹介いただきました、久世 亜梨沙でございます。壇上より失礼いたします。この度、跡継ぎとして顔見せできる機会を頂きありがとうございます。まだまだ、未熟者。祖父の元で勉強させて頂いております。後ほど、皆様の元へ改めてご挨拶させていただきたく思っておりますが、無作法がございましたらどうかご容赦ください」

お辞儀で閉めて、祖父の後ろに下がった。
< 58 / 168 >

この作品をシェア

pagetop