夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「無理よ。私は、お披露目に出ないから」
祖父と孫の睨み合い。
先に、目を逸らしたのは私だった。
バンと座卓を叩き、祖父の部屋を飛び出した私は、部屋に戻るなり荷造りをして家出の準備を始めた。
そこへ、母から話を聞いたであろう父がやってきた。
「亜梨沙、お父さんとケンカしたって聞いたけど」
荷造りする姿に、父なりに思うところがあったのか、ベッドに腰掛けて話しだした。
「亜梨沙がまだ戸惑いながら、一生懸命に跡継ぎとして頑張っている様子をお父さんもお母さんも、ただ、影から応援するぐらいしかできないでいた。最近の亜梨沙の頑張りは、そろそろ限界にきているのかもしれないね。そこでだ、お父さんから亜梨沙にこれまでの頑張りを労おうと思う。友人が離島でペンションを経営しているんだけど、そこで10日ほど休養してきたらどうかな?」
「休養?」
「そう。お披露目の話は僕だって、まだ早いと思う。でもね、胸の病気を患い、1日でも早く後継者を育てなければとお父さんが焦る気持ちはわかってあげてほしい。完璧にならなくてもいいんだよ。失敗を恐れずに、これまでの頑張りを披露する場だと思っていればいい」
「失敗して見下されたりしない?」