夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました

「そんな輩は招待されてないよ。ただ、久世の親族連中が喜ぶかもしれないね」

「じゃあ、完璧じゃないとダメじゃない」

「名ばかりの親族というだけだ。お父さんの眼鏡にかなう人物はいなかった雑魚ばかり。負け犬の遠吠えでしかない。何か言ってくるようなら、私が亜梨沙の壁になり守るから、安心して失敗していいんだからね」

「…ふっふふふ。安心して失敗しろなんていう親は、お父さんだけだよ。ありがとう、少し気持ちが軽くなった気がする」

生活がガラッと変わり、跡継ぎ、婚約者を決めないといけないプレッシャーに、気を張っていたのかもしれない。

翌日、父の友人がいる離島へ向かった。

父に何か言われたであろう祖父は、見送りにも出てこなかった。

母曰く、初めて父に論破されふて寝しているとのこと。

いつもは頼りない父が、娘の為に頑張ってくれたらしい。

指定された離島へは、飛行機から高速船で移動した。

諸島の中の一つで、人工100人にも満たない周囲4キロほどの小さな島を珊瑚礁に囲まれ、ほとんどが自然のままで美しい島へ。

夏休み真っ只中だからか、家族連れやカップルが船内にいる。
< 9 / 168 >

この作品をシェア

pagetop