シングルマザー・イン・NYC
翌日。
レストランの個室で俺の決意を伝えると、葵はテーブル越しに身を乗り出し、パンッ、と俺の頬を平手で打った。
「散々待たせておいて、よくもそんなことを!」
激高する葵に対し、俺の心は静かだった。
「それは、すまなかった。ニューヨークに行く前から、なんとなく葵とは合わない気がしていて。でも、はっきり別れを告げる気にもなれなくて――」
立ったまま俺を見下ろしている葵が、おもむろに水の入ったグラスを手に取った。
よける間もなく、俺は頭から水を浴びせられた。
「そんなにあの女が良かったの?」
「ああ」
「でも、もう彼女とは終わったんでしょ?」
まだ母から情報が伝わっているのか。