シングルマザー・イン・NYC
俺は戸惑った。
幼児を抱っこしたことはない。
しかし希和の息子――ケイといったか――は人懐こいのだろう、にこにこしながらこちらに両腕を伸ばし、俺に抱かれる気満々だ。
なぜ俺はローゼンタール夫妻とのディナーに来て、希和とアレックスの子供の面倒を見る羽目になっているのか。
わけがわからない。
そう思いつつも、心を決めて両腕を伸ばす。
ずっしり。
思ったよりもケイは重かった。
「左手でお尻の所を支えるといいよ」
そう言いながらデイビッドさんは、アイランドキッチンに置いたグラス四つに、深紅の飲み物を注いだ。
「それは?」
「ザクロジュース。ケイも一緒に乾杯しよう」
スティック野菜とディップが載った皿を持ったカミーユさんもやって来た。
「さあ、座りましょ」