シングルマザー・イン・NYC
「ナニーは一日ケイとアパートで過ごして、六時の閉店時間に合わせて、キワのお店にケイを連れてくるの。で、希和はケイと散歩しながら帰るの」

カミーユ夫人の言葉をデイビッド氏が継ぐ。

「でも今日は急なお客さんが来て、7時くらいまでかかりそうなのね。それで、急遽うちで預かることになったんだ」

「そゆこと。おなかちゅいた」

今度はケイ。

「そうよね、お腹すく時間よね。はい、野菜スティックとフムス、どうぞ」

カミーユさんが小さな更に人参ときゅうり、そしてフムスを取り分けた。

フムスはひよこ豆とニンニクなどでつくるペーストで、なかなかうまい。

野菜だけでなく、パンなどにも合って、スーパーに行けば色々な味のものが売られている。
俺もニューヨークに住んでいた頃はよく食べた。

ジュースの後に注がれたのは、俺が持参した日本酒。

フムスをつまみに日本酒をゆっくり味わいながら、俺はここに来てからの出来事を整理していた。

そう言えばさっき、「希和の店」と言っていた。

以前ニューヨークで希和を探しても見つからなかったのは、自分の店をオープンしたことが原因だったのだろうか?

「あの…」

「何?」

「さっき、希和の店(・・・・)と言いましたよね」

「ええ」

「希和は、自分の美容室を?」

「そうよ」

「場所は?」

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