シングルマザー・イン・NYC
俺が訪ねることはないと思うが、気になった。
どこでどんな店をやっているのだろう。

ローゼンタール夫妻が顔を見合わせて笑った。

「隣だよ」

「隣?」

「この家の左の家の一階。あそこをプライベート・サロンにして、希和とアレックスを店長として雇ったの」

「じゃあ、さっき明かりがついていたのは――」

「希和が仕事中」

「……」

驚きで言葉が出なかった。

「オーナーは私。会員制の美容室なので、広告などは一切出していないの。最初は私のごく親しい知り合いや親戚だけが利用していたのだけど、口コミで広がって。審査制で入会可能な仕組みにしたの。かなりの収益を上げているわ」

そうか。

希和はニューヨークで、サクセス・ストーリーの王道ともいえるキャリア形成に成功したのか。

共働きで子供を育てながら、よく頑張ったな。
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