シングルマザー・イン・NYC
「すごいこと考えるなあ、カミーユさん」
アレックスは床に散らばった髪をブラシで掃きながら、あははと笑った。
サロンに戻った私は、お客様が途切れるのを見計らい、カミーユさんの計画を話したのだ。
「キワがホテルのフロントに電話して、イツキに自分の携帯番号を伝える、と。それでイツキがキワに会いたければ、希和に電話をしてローゼンタール夫妻の部屋で密会、か。ロマンチックだね~。俺もジェイドとそういう秘密めいたシチュエーションに置かれてみたい。すごく盛り上がりそう」
「変な想像しないで」
「変じゃないだろ。婚約までして別れた二人が、そんな状況で再会したらきっと――」
「慧のことを伝えるために会うんだもの。向こうが私に会いたいと思えば、だけど」
「はいはい」
アレックスの口調には、からかうような響きがあった。
「なに、その言い方」