シングルマザー・イン・NYC
それから何時間たっただろうか、私は目を覚ました。

すっかり暗くなった室内。
ぼんやりしていると、コンコン、と静かなノックの音がした。

「……はい」

ぐっすり眠っている慧を起こさないよう、私はドアのそばまで行ってから、小さな声で返事をした。

「医師のフィリップですが」

「どうぞ」

ドアを開けると入ってきたのは、慧を診察してくれた先生だった。

「どうですか、息子さんの様子は?」

「夕方からずっと、眠っています」

「疲れたんだね。かわいそうに、ショックだったろう」

先生は、慧の額にそっと手を当てたり、聴診器で心音を聞いたりした。

「――問題なさそうですね。もし何かあったら、ブザーを鳴らしてください」

「はい。あの――篠田さ――息子をかばった男性は?」

医師は黙った。

そうか、患者のプライバシーがあるから――勝手に病状を話すわけにはいかないんだ――。

また心を不安が覆いつくす。

「ちょっと、出ましょうか」

先生が静かにドアを開けた。
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