シングルマザー・イン・NYC
腕時計を見ると、二十三時を回ったところだ。

ずいぶん長い間眠っていたんだな、私。

青白い照明が照らす廊下を、フィリップ先生の後をついて歩く。
静かだ。

階段を降り、三分ほど歩いただろうか。
ある部屋の前で、先生が足を止めた。

「ミスター・シノダがあなたに会いたいと」

「え……? じゃあ」

「しばらく前に意識が戻りました」

先生がドアをノックすると、「はい」と声がした。
大きくはないが、しっかりした声。

「すみませんが、面会は短めに。まだ安静が必要なので。十分したら迎えに来ます」

「はい」

どうぞ、とドアを開けてくれた先生に促され、私は中に入った。

篠田さんはベッドに横たわったまま、少し不安げな表情で、こちらを見ていた。
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