シングルマザー・イン・NYC
「慧を助けてくれてありがとう」

そう言ったつもりだったが、声はかすれ、辛うじて

「……りがとう」

だけが微かな音になった。

聞こえなかったのだろうか、篠田さんは「ごめん」と言った。

「なぜ『ごめん』? 篠田さん、謝る必要ないでしょう」

慧をかばった直後も、篠田さんが同じ言葉を口にしたのを思い出した。

「――君の息子――ケイが急に飛び出したのって、俺を追いかけたのかなと……」

篠田さんらしくない、ぼんやりした口調。

「……そんなはずないか。会ったの、まだ小さい頃だったし……手に持ってたの、あのぬいぐるみだと思ったんだけど――ケイって、どんな字? 気になってて――それとも、漢字は使わないのかな……」

慧眼(けいがん)の慧だよ」

そう答えると、篠田さんが少しだけ笑った。
でもすごく疲れている様子だ。

「いい字だな――。やっぱり会えてよかった、希和」

「私も。また会えてよかった。会いたかったの。さっきは死んじゃうかと思って――」

涙が溢れた。
泣いてばかりだ。

涙をぬぐうように頬に触れたの篠田さんの左手を、私は両手で握った。
この手を放したくない。

「謝るのは私の方なの。ごめんなさい」
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