シングルマザー・イン・NYC
「こんなこと、今この場で伝えたら迷惑で困るかもしれないんだけど――」

「何?」

篠田さんが真っすぐに私を見た。

「あなたの子供なの」

「――え?」

「慧は、あなたの子供なの」

「……」

黙ってしまった。
私は、一体何を言われるのだろうと――何を言われても仕方がない、と覚悟して――待った。

やがて篠田さんは、

「アレックスの子供じゃなくて?」

と不思議そうな顔できいた。

「アレックス? なぜ? だってアレックスはゲイだって知ってるでしょ?」

と答えてから、私は思い出した。
篠田さんには伝えていなかったのだ。

「ごめんなさい……教えてなかったね」

「うん。聞いてなかった。おかげで勘違いしてた」

篠田さんは、楽しそうに笑った。

「怒らないの?」

「……そんな必要ないし……よく一人で産んで、あそこまで育てたなあ……」

そしてぼんやりと、感心した様子で言ったのだった。

「……もっと色々ききたいんだけど……眠くなってきた」

「うん、眠って」

「――明日また来て。慧を連れて。会いたい」

「うん」

「――あと――……」

続きの言葉を待ってみたが、篠田さんは目を閉じ、やがて寝息を立て始めた。

「篠田さん。そろそろ行くね。ちゃんと明日また来るから」

もう、十分を過ぎている。

私は篠田さんの肩にそっと両腕をのせて体を寄せると、唇を重ねた。
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