シングルマザー・イン・NYC
ドアを開けると、そこにはフィリップ先生が立っていた。

「すみません、立ち聞きするつもりはなかったんですが――ノックしずらい雰囲気で」

先生は申し訳なさそうな表情をした。

「いえ。私こそすみません、彼を疲れさせてしまったようで……今、眠りました」

「そうですか。僕は様子を見てから戻ります。部屋、わかりますか?」

「ええ、大丈夫です」

「じゃあ、私はこれで」

先生が病室に入った直後。

「斉藤希和さん、ですよね?」

日本語で呼びかけられた。

声のした方を見ると、少し離れた壁際のソファに腰掛けていたスーツ姿の男性が、すっと立った。
七三分けに淵なし眼鏡。
篠田さんより少し年上くらいだろうか。

「私もお話があるのですが。秘書官の小沢です」

すぐそばにやって来た彼は、名刺を差し出した。

篠田さんの秘書。
そういえば、事故現場で見かけた気がする。
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