シングルマザー・イン・NYC
「驚きましたよ。いや、驚いたなんてもんじゃないです。もし樹さん――先代の時から秘書をしているものですからつい名前で呼んでしまうのですが――大臣に何かあったら」

人気のないラウンジルーム。

テーブルに向かい合って座っている小沢さんは、背もたれに体を預けて天井を見上げ、ネクタイを緩めると、ふうーっ、と大きく息をついた。

「すみませんでした」

私は頭を下げた。

「いや、謝罪は不要です。大臣が勝手にやったことですから。とはいえ、当初の予定通り明日の便で帰国するのは無理だし、そうなると、各種スケジュール色々と調整が必要で」

今度は、腕組みをしてじっとテーブルを見つめている。

そうよね。

一国の大臣だもの。

「怪我をしたので帰国は延期してしばらくニューヨークで療養します」なんて、簡単にできるわけがないのだ。

関係各所との調整その他、色々なことが必要になるのだろう。
そして中心的な役割を担うのが、きっと、秘書官である小沢さんなのだ。

改めて事態の大きさに気が付き、私は身の縮む思いでうつむいた。
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