シングルマザー・イン・NYC
「それで、続きは!? どこまでした?」

その日の夜、いつもの恋バナ時間。
アレックスはソファから身を乗り出した。

「どこまでって……随分ストレートな聞き方するね」

「だって恋愛初期のクライマックスじゃないか。気になる」

「キスまでだよ」

「嘘。ずいぶん帰りが遅かったじゃないか」

「ほんと。ビーチで有名なお店のホットドック食べて、アストリアに移動してぶらぶらして、晩御飯はアストリア・シーフードで新鮮なお魚をたっぷり。おいしくて安かった。今度アレックスも行こうよ」

アストリア・シーフードでは、店内に新鮮な生の魚介がたっぷりと並べられ、客はその中から食べたいものを、袋に詰めてレジに持って行く。
そしてレジで調理法を――グリルとかフライとか――指定するのだ。

「お誘いどうも。じゃあ、俺たちの休みが重なる日に行こう。それよりさ、篠田さん、ここに呼べば?」

突然何を言い出す。

「俺がジェイドの部屋に泊まるとき、篠田さん泊めればいいじゃん」

ジェイド、というのはアレックスの彼氏だ。

「えっ、いきなりそこまでする? 誘いづらいよ、いかにもって感じで。恥ずかしい。もっとこう、自然な感じがいい」

だがアレックスは、オーノーとあきれた表情で言い、例の仕草をした。

「いつもご馳走になってばっかりなんだろ、お礼に日本食作ってあげるって誘えば」

なるほど。それなら自然……かな……?
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