シングルマザー・イン・NYC
さっきまでの喧騒が嘘のように静まった。

返事をしないと。

「――はい」

その瞬間、篠田さんは力強く私を抱きしめた。

「ありがとう――良かった、緊張した」

そして私から体を離すと、軽く口づけた。

周囲から湧き上がる歓声、拍手、そしてお祝いの言葉。

篠田さんは慌ただしく私の左手を取り、手袋を外すと、薬指に指輪をはめてくれた。

「あと、これ」

そして私の手のひらにのせてくれたのは、鍵。

「俺の部屋の合鍵。持ってて」

「うん」

「今日、6時には事務所を出ようと思ってる。部屋で待っててくれる?」

「わかった」

「じゃあ、後で。名残惜しいけど、今はもう行かないと」

私たちは見知らぬ人々の祝福の間を通り抜け、大通りに出た。

そして篠田さんは北へ、私は南――篠田さんが働き始めてから引っ越した部屋がある方向だ――へと、向かった。

別れる前に、もう一度抱き合って、キスをした。

信じられない。

私、篠田さんと結婚するんだ。
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