セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
そう問いかける花那に颯真は静かに頷いた。彼女とやり直したい、そう考えた颯真にとって契約婚も離婚の話も無かったことにしてしまいたいものだったから。
それがどれだけ記憶を取り戻した花那を悩ませているとは知りもしなかったのだろう。
「君が俺との結婚生活を忘れてしまっていた。それは偶然だったが、花那ともう一度暮らしたいと思った自分には都合が良かったのかもしれない。今を壊したくなくてずっと隠してしまった」
あったはずの花那の荷物がなかったのも、離婚届がどこにも見つからなかったのも……全部、颯真がした事だった。そうする事で花那の記憶が戻るのを少しでも遅らせたかったのだろうか?
花那たちの結婚指輪が無かったのも当然だった、それを颯真に突き返したのは他でもない彼女なのだから。その指輪をもう一度、花那の指にはめることは出来なかったのだろう。
「そう、だったのね」
颯真の言葉に、花那は少し迷っていた。彼はすでに自分に記憶が戻っている事に気付いている。それでも……
「颯真さんにとって私の記憶は、戻らないままが良かったの……?」
彼に必要とされているのは過去も現在も全てを思い出した花那なのか、それとも記憶が無く颯真を素直に夫だと疑わなかった自分なのか。
……どうしてもそれが分からない。しかし花那にとっては大事な事でもある、だから颯真の本音が聞きたかった。