セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】


「正直な気持ちを言えば、花那(かな)の記憶が戻らない事を少しだけ願っていたかもしれない。そうすれば君は俺の傍にいてくれると思って」

 颯真(そうま)は正直な気持ちを花那に話す、下手に隠すよりきちんと自分の思いを伝えた方が良いと考えて。少なくとも何度か颯真は花那の記憶が戻らない事を望んだ、それは事実で……
 だから颯真は積極的に彼女の記憶を戻るようなことはしなかった、ただ花那が隣にいてくれるように。

「……でも、もう私の記憶は戻ったわ」

「知っている。でも俺が傍にいて欲しいのは記憶の有る無し関係なく、そのままの深澤 花那だから」

 記憶があるだけで愛されないなんて、そんな風に考える花那を今すぐにでも抱きしめたい。そんな衝動にかられながらも、颯真はきちんと自分の気持ちを伝えたいと思った。
 もし拒絶されても、信じられないと聞き流されてもいい……それでも想いを告げなければ自分たちの未来は何も始まらない。

「……でも、私達は契約結婚で。それももう期限切れの、そんな関係なのに」

「ああ、俺達の契約期間は過ぎた。でも今も俺達はこうして一緒に居る、どこにでもいる普通の夫婦で良いと思わないか?」

 まだ素直な気持ちを言えないでいる、颯真は遠回りな言葉ばかりを使ってしまう自分に苛立った。伝えたい事なんてたった一言なのに。

「急にそんな事を言われても、私は……」

 迷いを見せる花那に、颯真は自分の照れなどもう捨ててしまう事にする。少しでも可能性があるなら、それにかけて良いと。

「一度だけでいい、君に想いを伝える許可が欲しい。今まで随分と花那を苦しめてしまったけれど、俺にチャンスをくれないかー?」


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