セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「どうする、もう少し見て回るか? それとも昼近い時間だし、レストランにでも入ろうか」
そっと出された颯真の手に花那は自分の手を重ねて歩いている。先ほど不安にさせたことを申し訳なく思ったのか、颯真は花那の近くから離れなくなった。
――自分を見てくれるのが嬉しい、それなのに苦しくもなる。こんな思いをするくらいなら今すぐに記憶が戻ればいいのに……
そう思っても、まだ今の自分のまま颯真の傍にいたいと願ってしまう。記憶から消えた花那が颯真の本当の妻なのに、今の花那のまま颯真の特別でいたい。
「……我儘だわ」
「え、なんだって?」
ポロリとこぼれた自分に対する言葉、そのあまりにも自分勝手な感情に花那は思わず笑いたくなってしまう。
颯真は間違いなく自分の夫なのに、それでも他人の夫のように感じるのだからどうする事も出来ない。
胸の中で暖かな感情が育つたびに、颯真に言えない言葉がどんどん増えていく。
「何でもないの。でもそうね、私も少しお腹が減ってきたかも」
「そうか、じゃあレストランの方に向かおう。昼の時間だから少し混んでるかもしれないな」
少し寂しげな花那の様子に颯真は気付いたが、今の自分に出来る事が分からず繋いだ手に力を入れて彼女を連れて歩いて行った。