セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
花那はゆっくりと両親の事を思って、天国にいるであろう二人に話しかける。久しぶりに会えてうれしい事、あまり来ることが出来なくて申し訳ないとも。
そして五年間の記憶がなくなってしまったことと、それでも颯真が花那に良くしてくれている事などをちゃんと伝えた。
――いろいろ問題はあるけれど、私は幸せに暮らしているから安心してね。
両親との話を終えて花那が静かに顔を上げると、隣で彼女を待っていた颯真が微笑んでる。その優し気な表情に花那はまたも目を奪われた。
自分の夫の顔が整っているのは病院で会った時から分かっていたはずなのに、最近やけに彼の顔がまぶしく見える。その理由に心当たりがある花那は急いで頭を振ってその考えを追い出した。
――私じゃないの、私じゃダメなのよ。だから気付かないふりをしなくては……
颯真が見ているのは今のは花那に違いないのに、彼女はそれを受け入れられないでいた。二人の感情は向き合っているようにも見えるのに、どこかすれ違ったままだ。
「たくさん話した? ずいぶん長かったけれど」
「久しぶりだったし、いろいろあったもの。報告だけでも時間がかかったわ」
母親が亡くなったことも忘れて、颯真との結婚生活も記憶から消え去ってしまっている。そんな花那には両親に話したいことは山ほどあったのだろう。
そんな花那に颯真は「それもそうだな」とだけ言うと、彼女の手を取って歩き出した。