セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「私の荷物ってあれだけなのよね? 他にあったりなんてしないわよね……」
少し落ち込んだような声音でそう話しかけた花那の言葉に、颯真はドキリとする。今の花那の部屋に置かれているものは、ほとんど颯真が用意したもので彼女が元々持っていたものはわずかだった。
それを不思議にい思いながらも花那は理由を聞けずにいたが、とうとう我慢出来なくなったようだった。
「どうして? 花那は今ある荷物では不便なのか、それなら帰りにでも買っていけば……」
そう言いかけた颯真に花那はゆっくりと首を振ってみせる、彼女が言いたいのはそういう事ではないらしい。
「違うの。私は父や母の形見を一つも持っていないのかと、そう思ったら少しだけ寂しくて」
普通なら両親の形見くらい持っているはずなのに、花那の部屋をどれだけ探してみてもそれらしきものは見つからなかった。
それ以外にも何年もお気に入りで使っていたアクセサリーや、大事にしていた小さなアルバムもどこにもない。自分が捨てるとは思えないのに、無くなってしまっている。
「そう……だよな、両親の形見か。よし!」
颯真はしばらく考えた様子を見せたが、何か決意したような声を出すとつないでいた花那の手を引っ張って駐車場へと向かう。
「どうしたんの、颯真さん?」
「いいから、早く家に帰ろう!」
珍しく強引な颯真に助手席に乗せられ、颯真も運転席に乗り込むとシートベルトを着けるとすぐに車を発進させた。