セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
帰り道、颯真は花那にほとんど話すことなく何かを考えているようだった。そんな彼に花那も無理に話しかけようとはせず、来る時と同じように音楽に耳を傾けていた。
それでも最初の頃ほどにの気まずさは二人の間にはもう無い、お互いが打ち解けるにつれて随分穏やかな空気が流れるようになったのだ。
「……先に花那に謝っておかなければいけないことがある」
「謝る? それはいったいどういう事?」
赤信号で車を止めた颯真が、少しだけ弱気な声でそう言った。花那にはその理由がこれっぽっちも思いつがず、ただ首を傾げて颯真の話の続きを待った。
颯真はまた少し考えた様子を見せた後、小さく首を振って……
「続きは家に帰ってから話すよ、ここで君の機嫌を損ねたりしたくない」
そう言った颯真は、青信号を確認してまた車を発進させる。颯真がこんな顔をするような謝らなければいけない琴とは何だろうかと、花那は少しだけその事に不安を感じていた。
――何を話すつもりなの、颯真さん。すごく覚悟を決めていたような顔をしていたけど、まさか……
幾つかの良くない考えが、花那の頭の中をよぎる。真面目な颯真に限ってそんな事はないと思いたいが、一度胸に宿った不安はムクムクと大きくなるばかりだ。
帰りに昼食をとるために二人でレストランに入ったが、今朝ほどの会話の盛り上がりもなく黙々と食事をすることになってしまった。
それでも花那は颯真を、颯真は花那の様子を心配そうに見ていたのだが。