セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「花那のお父さんとお母さんの形見、ずっと俺が持ってた。すぐに渡してあげなくて、ごめん」
「……そうだったのね。ちょっと驚いたけれど、そんなに謝らないで? 私は気にしてないわ」
颯真が花那の両親の形見を隠したのは何か意味があっての事だろう、そう考えた花那はそれ以上彼の事を責めようとはしなかった。
時々颯真が見せる不安そうな表情にも何か関係があるのかもしれない。それにこうして両親の思い出を花那の手に戻してくれたのだから、それでいいと思った。
「もう開けていい? この中に何が入っていたのかも私は覚えてないの」
「ああ、もちろんだ。それは君のために残された物なんだから」
小さな箱は少しだけ日焼けしているが、それでもほとんど汚れもなく綺麗なまま。その箱のふたを手に取って開け、そっと中を覗く。
「……ああ、これがお父さんとお母さんが私に残してくれたものなのね」
懐かしい物を見て、花那の中に両親との楽しかった記憶が甦る。父が気に入って長い間大切にしていた時計と、母が父から貰ったと話してくれたアメジストのネックレス。
花那がまだ幼い頃、お洒落なワンピースとネックレスを着けた母と一緒に百貨店で父のこの時計を選んだ。そんな日が鮮やかに思い出される。