ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。


「……なればいいよ」


顔をわずかに離した織くんが、鼻先が触れそうな近さのまま言う。


「なっ……」


「俺にはいっぱい欲張りになってよ。俺の方がずっと欲張りだから」


織くんの手のひらが私の頬を包み込んで指先が優しく撫でる。


「織くん……織くんは、なんでそんなに私のこと……」


こんな平凡な、何もない私のことをどうしてここまで好いてくれるんだろうか。


「……俺ね、高校に入学する前から、白井さんのこと好きなんだよ」


「えっ?!」


「白井さんが俺の存在を知ってくれるずっと前から」


え。
そんなこと……。


「その話、聞いてくれる?」


「も、もちろんだよ!」


私はそう返事をしてから、まずは織くんをうちにあげて。


ダイニングテーブルに織くんを案内して、温かいお茶を入れてから。


彼の話に耳を傾けた。


織くんが、私を初めて見かけた日の話──。

< 270 / 277 >

この作品をシェア

pagetop