エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
大変ではあるけれど、働けることが嬉しくて、友里は貪欲に知識を吸収していった。

山内の教えを書き留めたメモ帳はすでに二冊目である。

「これでひと通りの説明が終わったんですけど、わからないことはありますか?」と山内が聞いた。

友里は頭の中で質問を探したが、見つからずに眉尻を下げる。

「説明していただいたことは理解したつもりでいます。でも、実際にやってみた時にきっと、わからないことが出てくると思うんです」

昨日までの二日間は業務の説明を聞いただけ。

今はまだ、なにがわからないのかもわからない段階である。

おずおずと答えた友里に、山内が慌てる。

「そうですよね。私ったら、実際にやってもらわず一気に説明して、ごめんなさい!」

「い、いえ、山内さんはなにも間違えていませんよ。私の方こそ、曖昧な返事をしてすみません」

「そんな! 友里さんに謝られると困ります!」

新人の友里に、先輩の山内がペコペコと頭を下げている。

理事長の娘だからだろう。

山内だけでなく、他のスタッフからも気を使われていると友里は感じていた。

< 10 / 121 >

この作品をシェア

pagetop