エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
(言えない。せっかく仲良くなれたのに、苦労知らずでズルいと思われそう……)

友里は今日もお弁当だ。

「はい、あーんして」

二個入っているミニハンバーグのひとつを、真由美の口に入れてごまかそうとした。

もぐもぐと咀嚼して飲み込んだ真由美は、「美味しい」と言った後に首を傾げる。

「どうしたの?」

「前にもハンバーグをもらったけど、味付けが違う気がして」

「うん。実はこのお弁当、雅樹さんが作ってくれたの」

「雅樹さんって呼んでるんだ! いや、それより、香坂先生の手作り弁当!?」

雅樹は料理上手。

一緒に暮らし始めた初日は休日だったので、手の込んだ夕食を振舞ってくれた。

友里も料理の腕前には自信があるけれど、雅樹は家庭料理の範疇を越えている。

メイン料理として出されたローストビーフは、火の通し具合が抜群で、ソースは品があり、高級レストランのものより美味しかった。

その話をしたら、真由美に羨ましがられる。

「料理上手な旦那さんて理想だわ。かっこいいし、医者だからセレブだし、最高! 友里はいいなぁ」

(最高の旦那様か。そうかもしれないけど……)

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