エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
「違うよ、夜のこと。外科医だから手先が器用だろうし、ちょっと興味があって聞いてみた」

途端に友里の顔が耳まで火照る。

「ええと……うん」

普通の夫婦ならあるはずの行為が、ないとは言いにくい。

雅樹のプライドを守らなければ、という思いもあり、咄嗟に嘘をついてしまった。

けれども肯定してから、どうしていいのかわからないほどの羞恥に襲われた。

友里は男性経験がない。

交友関係まで父に管理されてきたので、恋人など作れるはずもなかった。

そのため、こういった話に慣れていないのだ。

真由美が座ったまま足を踏み鳴らして悶絶している。

真っ赤な顔の友里を見て、勝手に激しい情事を想像したらしい。

「香坂先生のことだから無言で攻めてくるの? 意外と言葉攻めするタイプだったりして。あ、もしかして夫婦でお医者さんごっことか――」

「真由美、あのね!」

慌てて友里が話題を変える。

「職場では結婚のこと、内緒にしようと思っているの」

真由美がキョトンとした。

なぜかと問いたげな不思議そうな顔をしてから、すぐに「ああ」と納得している。

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