エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
「香坂先生を狙っている女たちに睨まれそうだもんね。その方がいいんじゃない?」

「あ、そっか。それもあるかも……」

「ん? 他になにかあるの?」

半年後に離婚するかもしれないという事情は、説明しにくい。

雅樹から言い出したことであっても、友里が審判を下すということが、高飛車なお嬢様だと思われてしまいそうな気がしていた。

(真由美には嫌われたくない……)

「なんでもない」と首を振った友里は、小さく握られた俵型おむすびを口にする。

三つ入っているおむすびは味違いで、友里を喜ばせたいという彼の真心が伝わってくる気がした。

(今度は私が早起きして、雅樹さんのお弁当を作ろうかな。あ……迷惑かもしれないから、聞いてからにしよう……)

結婚してからの六日間、気づけば雅樹のことばかり考えている友里であった。



(雅樹さん、今夜も遅い……)

時刻は二十三時半。

外科医に終業時間はあってないようなもの。

日付が変わってからの帰宅となることもあるらしい。

よく体が持つと感心する。

夕食はいつも院内で適当に済ませているそうで、友里は自分の分だけ作ればいい。

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