エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
友里が少し首を傾げたら、「なにかいいことがあったのか?」と問われる。
キョトンとしてしまうと、「いや、嬉しそうな顔をしていたから」と指摘された。
頬に手をあてた友里は、顔を赤らめて目を泳がせる。
「早く帰ってこないかと待っていたので、その……」
「なぜ?」
「今日のお弁当、とても美味しかったです。ありがとうございました。それを伝えたくて……。先に寝ているように言われていたのに、すみません……」
いつものことではあるが、雅樹のポーカーフェイスと淡白な口調から、不機嫌にさせてしまったのではないかと、友里は気にした。
「友里」と呼ばれ、逸らしていた視線を、おそるおそる彼に戻す。
すると、そこには優しげに微笑んだ彼の顔があった。
(雅樹さんが笑ってる。初めて見た……)
目を丸くした友里の頭に大きな手がのり、よしよしと撫でられる。
友里の胸がドキドキと鳴り立てているが、これが緊張なのか、ときめきなのかは、恋愛経験が少なすぎて友里にはわからない。
「喜んでもらえてよかった。毎日作ろう」
心なしか、雅樹の声が弾んでいるように聞こえた。