エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
「あ、あの、あの……」

急に抱きしめられて驚きを隠せない友里の耳に、艶のある低音が響く。

「俺に慣れてきた?」

「は、はい。でも私、こういうのは……」

彼の胸を押して顔を上げると、男の色香を漂わせた瞳と視線が交わり、心臓が大きく跳ねた。

色気を醸す彼を初めて見る。

長い下し髪に、雅樹の器用そうな長い指が潜り込み、後頭部を押さえられて友里は慌てた。

「ま、待ってくださ――」

「六日間、待ったよ。もう待てない」

次の瞬間、唇を奪われた。

彼は目を閉じているが、友里は見開いたままだ。

唇を強く押しあてられて数秒し、友里が抵抗しないのがわかると、雅樹の舌が入り込む。

友里にとっては人生初めてのキス。

抵抗しないのではなく、身じろぐことさえできずに固まっているだけである。

(どうしたらいいの?)

舌をからめとられ、吸い上げられて、どうやって呼吸していいのかもわからない。

次第に息苦しくなり、顔を背けてキスから逃れると、体のバランスを崩された。

「きゃっ!」

雅樹が友里を横抱きに抱え上げたのだ。

そのまま廊下を進み、寝室のドアに彼の手がかかる。

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