蒼月の約束
第十五話
次の日、朝早くに王子が出発したと聞いたのは、エルミアが遅めの朝食をとっていた時だった。
「なんか急に突き放された気がするのは、気のせい?」
スクランブルエッグをつつきながら、不満そうにエルミアは言った。
「私の助けは要らないの?」
卵をゆっくり口に運び、リーシャがグラスに水を注ぐのをじっと見つめる。
「ミアさまの帰る時期が近づいて来たからです。ミアさまばかりに頼ってばかりはいられないと思われたのではないでしょうか」
リーシャの声色が少し落ちこんだ気がした。
最近になってやっと、この世界のことが好きになっていた。見た目も麗しいエルフたちとの生活にも慣れて来たし、王国を元に戻そうと頑張っている王子の役に立てていると実感できている時が一番生き生きした。
もちろん、元の世界に帰りたいという望みも、これ以上記憶が消えて欲しくないという願いも色濃く残っている。
でも、それでも今はもっと王子の役に立ちたい。
私は、王子が好きなんだ…
気づいてしまった気持ち。
でも、叶えられない恋心。
誰かを好きになるというのは嬉しい感情のはずなのに、心が痛かった。