蒼月の約束

「ミアさま!」

体を揺らされて、エルミアはハッと目を覚ました。

「何か悪夢でも…?」

不安げな表情を浮かべてサーシャがエルミアの顔をのぞき込んでいる。

「ここは…?」

天蓋を見つめながら、乱れた呼吸を整えようとする。

「ミアさまの自室でございます。王子の寝所からお連れしました」

サーシャが頭を下げながら言った。

「お、王子は大丈夫?」

サーシャとナターシャに抱えられながら、エルミアは体を起こした。

自分でも驚くくらい体が重く、思うように動かせない。

「回復に向かわれています。ミアさま、大丈夫ですか?」

エルミアのびっしょりと濡れた体に触れ、驚きを隠せないサーシャは聞いた。

「また予言を?」

「わ、分からない…」

そう呟いた瞬間、先ほどの悪夢がまた蘇る。

竜宮城で見た恐ろしい光景がここずっと頭から離れない。

そのせいで見た、ただの夢なのか、それとも予知夢なのか。
その区別がつかなかった。

「…女王を見た」

エルミアの体を拭き、服を着せているサーシャとナターシャが顔を上げた。

「そこにセイレーンもいた…」

そう口にすると体がガタガタを震え始めた。

あれは夢ではないのかもしれないと思うと途端にもの凄い恐怖が襲い掛かって来る。


「セイレーンだけじゃない。トックもアゥストリもいた…。私のせいで…」

自分でも気がつかない内に涙がどんどんあふれ出してくる。

サーシャがナターシャに目で合図をし、ナターシャは素早く部屋から出て行く。

サーシャは、着替えが終わったエルミアをゆっくりとソファーへと先導する。

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