蒼月の約束
その日から兄の体調がどんどん悪化していった。
薬を貰いに村へ出ても、薬がないとの一点張りだった。
王族の検閲が頻繁に入るようになり、今までいた混血の商人たちはほとんどいなくなり、村はどんどん貧しくなっていったのだ。
治癒の魔術をどれだけ覚えていても、兄に使うのは気が咎めた。
森に入り、他の動物を傷つけては治癒の練習をした。
それでも、寝たきりで話すことも食事をとることもままならない兄を目の前にすると、手が震え、体が震え、呪文を唱えることが出来なかった。
一体、あの夜に何があったのか…。
ロダは一体何をしに来たのか。
それだけがずっと頭の中で何度も廻っていた。