妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「されてんじゃん」


時原は、力が抜けるようにおでこを私の肩に乗せながら、呟いた。


途端に触れた温もり。

全身の熱が肩に集まる気がした。


「私的にはカウントされないんだけど……。じゃないと」


「じゃないと?」


言葉を切った私は、先を促されて唇を結んだ。


すごく言いにくい。


だけど、時原の純粋な瞳に見つめられて……、

顔を背けながら切り出した。


「昔、お兄ちゃんに何回もされてるから……」


「え?」


「ほら、王子様がお姫様に挨拶のキスを手の甲に、とかあるでしょ。ごっこ遊びみたいな感じでお兄ちゃんにされてたの」


黒歴史並みに葬り去りたい過去。

早口で説明していて恥ずかしくなる。


「そうなんだ」


「……だから、私としては絶対にカウントしたくないんですよ」


「んー、そっか」


ドアについてた手を引っ込めて、腕を組む時原。


何やら考えている様子。



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