妹を溺愛する兄が先に結婚しました
真琴が最近、カッコイイと言っている先輩に似ている。

……そんなことを考えている時だった。


「時原はダメ!」


響く声で真崎が叫んだ。



「えぇ、どういうことぉ〜?」


「好きなの?」


真琴とイッチーに迫られて、顔を真っ赤にする真崎。


それを見れば、すぐわかる。

あの男のことが好きなんだと……。


その瞬間。

俺の中で何かがプツンと切れた気がした。



真崎を呼び出して、俺が文化祭に来た理由を伝えると……、

顔を強張らせて謝ってきた。


「折部くんを裏切るような真似して、ほんとにごめんなさい」


……なるほど。

練習試合の日に、俺を引き止めて言いたかったのはそのことか。


すべてに合点がいった。


「もういいよ」

そこで許せる人間だったら、俺はこうなっていなかったかもな。


……握り拳を作って。


「なんて言うと思ったか」


そう吐き捨てた。



嘘つきなお前に。


わからせてやる。

裏切られた俺の気持ちを。


全部をぐちゃぐちゃにして。悲しめばいい。



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