絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!

 イラリオさんのご自宅は二階建てのお屋敷で、馬車乗り場や厩舎も備えた大きな庭もあった。 
 道中でイラリオさんはしきりに『俺の家は無駄に広いから、部屋はあるんだ』と言っていたのが納得の、大きなお屋敷だった。

(イラリオさん、聖騎士団の団長ってだけあってお金持ちのご子息なのでしょうか……?)

 もしかしたらドアを開けた瞬間、使用人が列を成して待っているとか?
 そんな想像をしてちょっとどきどきしていた私は、ドアが開いて別の意味で驚いた。

「ここ、住んでいるの?」
「住んでいるよ。いや、そのだな……。正確に言うと、たまに寝には帰っている」
「…………」

 寝には帰っている。まさにその言葉の通りなのだろうな、と思った。

 だって、屋敷の中はイラリオさんが使っているという部屋だけが異様に生活感が溢れて乱雑にものが散らばり、その他の部屋はお化け屋敷のようになっていたのだ。
 何年間部屋をこのまま放置したのだろうかと呆れてしまうような、積もり積もった埃の山。
< 71 / 312 >

この作品をシェア

pagetop