平凡な私の獣騎士団もふもふライフ4
リズが自分に話せなかったのは、ジェドが『そんなものは信じない』と態度で見せてしまったせいだろう。

彼女の話だったから、愚痴でもなんでも喜んで聞いてあげるのに。

「リズ」

こんな時に会いたくなってしまって、つい名前を口にした。

初めて呼んだ時から、不思議と口に馴染んだ〝音〟だった。それは、一目で彼女に恋をしてしまったからだと、あとで知った。

ジェドは出会ってからゆっくり話すまでの間だって、何度もその名前を、頭や心の中で繰り返していた。

「ジェド!」

意識が落ちかけた時、不意に名前を呼ぶ声がして驚いた。

ハッと顔を上げると、なぜかそこにはリズがいて、ジェドの腕をしっかりと掴んで引っ張り――眩い世界へと救い出してくれた。



◆§◆§◆



「あ。でっかい薔薇がある」

やがてシモンが、ある方向を目に留めた。

「えっ、そうなの?」

自分と一緒に走ることで、辿り着ける。勢いでそう推測したものの、本当に辿り着けたのには驚いた。

彼の勘任せで走っていたリズは、カルロやエリーと共に目をこらす。

「やっぱり何も見えないわ……。そういえば、魔法は無垢な子供の目にしか映らないんだった」

「俺と同じくらいのサイズの薔薇のガラスの像みたいなのがあって、浮いていて、ゆっくり回ってるんだ」

走りながら、シモンが自分が見えていることを教えてくれる。

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