平凡な私の獣騎士団もふもふライフ4
あの時、亡霊はリズをそう呼んだ。彼は〝アティーシャと同じ幸運の娘〟だと口にしたのだ。

アティーシャは、一千年前にいたという不思議な女の子だ。

領主とその婚約者と仲が良くて、獣と話しができて、グレインベルトの白獣たちが唯一受け入れた一般の女の子――それ以上の詳細は知らない。

ただ、カルロが語った〝伯爵家の記録に名前を残されなかった女の子〟が、自分と同じように『幸運の娘』と呼ばれていたことは分かった。

「でも、特別だなんて……私はそんなことないんだもの」

心当たりがなかったから、亡霊の言葉も気にしないことにしたのだ。

不運体質で、獣騎士団に来たのも偶然だった。

ジェドとコーマックとの対面も、カルロとの驚きの出会いも全てそうだ。そして、過ごす中で特別な何かを発揮したこともない。

「特別さ。あんたの周りに、その証拠がごろごろあるだろう」

「え……? 証拠?」

思い当たることがなくて見つめ返すと、魔女が白い指を差してきた。

「カルロは孤独な一頭に戻らず、第一王子は殺されず幼獣も人間に絶望して帰ることにならなかった。そして少年も亡霊も救われ、獣騎士団長たちは無力を悔いる〝雨の涙の葬式〟を迎えることもなかった」

それ、何……?

まるで呪いでも紡がれたように動けなくなる。

あまりにも現実味のない話だ。しかし、魔女がすぅと消え始めてハッとした。

「待って!」

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