オスの家政夫、拾いました。2.掃除のヤンキー編
「なに、嫉妬してる?相手は7歳も年下の元部下だよ?」

「関係ねえよ。何歳だろうが、こんなに美人で素敵な女性と付き合いたいのは男の基本欲求だろう」


さり気なく言うその褒め言葉に、顔が赤くなる。恥ずかしさで視線を逸らすと、成が笑いながら彩響が持っていたダンボールを手に取った。


「…で、ちゃんとお片付けできた?」

「うん、きちんと終わらせたよ。嫌な思いも沢山したけど、いざ辞めるとなるとすごい複雑な気分になるね」

「まあ、そういうもんだろ。とにかく、長い間お疲れ様、彩響。これが彩響の新しい人生の一歩になるよ」

「うん、ありがとう。あなたこそ、チームとの話はきちんと片付いた?」


二人はロビーを出て、駅の方へ歩いた。彩響の質問に成が頷く。

「そう、最初すごい止められたけど、結局本人の意思だから」



成は結局、所属していたチームを辞めることになった。彩響は止めたけど、成はそのまま辞表をだしてしまった。理由は、「彩響の傍を離れたくないから」だった。気持ちは嬉しいけど、ちょっと申し訳ない気分になるのは仕方ない。


ー「本当に後悔しないの?」

ー「大丈夫、あっちこっち巡らなきゃいけない仕事はもうやめる」

ー「でも…」

ー「彩響、分かってくれ。俺は自分の『本当の夢』を追うと決めたんだ。だから、なにより、彩響の隣にいられる道を最優先で選ぶ。行っただろ、彩響は俺の『夢』だって」


それから時間が流れ、お互い自分の仕事を片付けることができた。今日からは本当に、彩響も成も、自由の身になれたのだ。


(いや、自由というか、無職になったんだよね…)


「無職」という言葉を思い出すとすこし不安にもなるが、取り敢えず今この瞬間はとても幸せに感じた。成が言ったように、今日から新しい人生の一歩を踏み出そうとしているから。ーこの隣にいる、とても素敵な笑顔の人と。

マンションに戻り、彩響は一旦自分の部屋で荷物を下ろした。軽く息をついてリビングへ出ると、成がソファーに座っているのが見えた。なにか話があるようで、彩響も隣に座った。


「あのさ、彩響。これからのことなんだけど…。この家はどうする?」

「そうだね…転職は考えているけど、この家はどっちみち処分するよ。もう高いローンを払えるほど、お給料も貰えないんだろうし、なにより…もう自分自身に集中する人生を送ろうと思っているから」
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