オスの家政夫、拾いました。2.掃除のヤンキー編
立派なマンションに住むことや、人に見られることが大事だと思って、このマンションを中々手放せずにいたけど…もうそういうことに命がけで、大事な時間を無駄にしたくない。これは成と再会した瞬間からずっと考えていたことだった。


「じゃあ、俺と一緒に、九州に行かない?」

彩響の話を聞いた成が、いきなり質問してきた。いきなり出てきた「九州」という地名に彩響が目を丸くする。


「九州?」

「実は、そこにある小学校で、サッカーコーチになってくれないかとオファーが来た。学校に所属して子どもたちの世話をする仕事だから、何日も家に帰ってこられなかったり、そういうことはない。もし、彩響が俺と一緒に来てくれたら、とても嬉しいと思う」

「九州…」

「そこに行って、条件の合う仕事をまず探して、自分の時間を作って執筆活動を続けたらどうだ?もちろん、俺もできる限りサポートするよ」


一度も行ったことのない場所だ。会社を辞め、家を処分して、東京ではない別の場所に行っても良いかもとうっすらと考えてはいたけど…。馴染みのない場所にいざ行くのが少し不安になる。


「もし、私が嫌だといったら、あなたはどうするの?」

「そんなの、決まってるだろう。ここで何か別の仕事を探す。俺の最優先順位は、彩響の傍にいることだから」


一瞬の迷いもなく、成が即答する。その姿に、彩響は思わず笑ってしまった。こういってくれることがとても嬉しくて、とても幸せだ。


「ありがとう、成。そう言ってくれて本当にありがとう」

「で、答えは?」

「もちろん、あなたに付いて行きます!」


彩響の答えに、成がとても嬉しそうに笑った。いつものように、とても優しい、太陽のような笑顔だった。



数日後。

彩響は自分の部屋で、外出の準備をしていた。思いっきり気合いを入れ、支度をしている姿を見て、成が部屋の中へ入ってきた。


「今日なんか大事な用事でもある?」

「あるよ、だって、今日出版社の人に会って、契約をするから」

「あ、そうか!今日か!」

「そう。だから今日は普段よりもっと気合い入れてるの」

「そんな大事な日は、俺の秘密兵器を使ってもらわないと!」


そう言って、成は自分の部屋に戻り、なにかを持ってきた。よくよく見たら、彼の手には青いネクタイがあった。


「これ、俺が大事な面接とかあるとき、いつも使うネクタイだよ。幸運のネクタイだから、今日は特別彩響に貸してあげる」
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